石を彫る

これは2回生の基礎制作で作った作品です。

①身の回りにあるもの
②機械を使わず全て鑿(ノミ)と鑢(やすり)で彫ること
という課題条件だったので、当時彫刻実習棟にあった
金床(アンビル)という金属を加工する台を
モチーフにして大理石を彫りました。全て手彫りで。

石彫は屋外で制作するのが基本なんだけど
時期が冬だったんで、まるで囚人の労役のようでした。
雪が横殴りに吹きすさぶ中、石を彫る。泣けます。

30センチ立方に収まる大理石を彫るのが
こんなにしんどいとは想像もつかなかった。
彫りながら「絶対に石彫は専攻しない」と
心に固く誓ったもんでした。そう思ったのは
僕だけではなかったようで20人弱の同期で
石彫を選択したのはF君たったひとりでした。

僕はこの頃、美術に関して感覚的なものより
技術的なものを優先すべきだ、という考え方を
持っていました。今もその考えはあまり変わっていません。
もちろん感覚的なものもとても大事です。
ただ感覚とか個性とかは技術というベースの上に
成り立っていると思っているので、そこなしでは
成り立たないように思うんですねぇ。
技術なしに感覚だけでモノを作ってると
作ってるときは楽しいんだけど、その作品を
客観的に観るとなんかただの自己満足にしか
見えないようは気がして。まぁ美術自体大いなる自己満足
なんで、せめて作る側としてそういうことを
意識したほうがいいんじゃない?と思ったりするんです。
だからこんな工業製品みたいなもん彫っちゃったんです。

石はほんとにきっついです。いい経験やったけど。