続・亀岡へ行く

僕がゴルフ練習場で整備を始めた従兄弟に会いにきた
目的は、彼を手伝うためだ。
ただ彼自身から手伝ってくれとは一言も言われていないし
僕が話を聞いて自発的に駆け付けたと言うわけでもない。

しいて言えば彼の母である叔母や僕の母親たちに
手伝ってやって欲しいと暗に言われたのが理由だ。

もちろん当の従兄弟本人が僕に手伝ってほしい
と叔母に漏らしていたらしいのだが、遠慮なのか
プライドなのか、僕には直接は言ってこなかった。

叔父さんが亡くなり、ゴルフ場の経営権のことで
裁判沙汰にまで発展し、元々の性格に一層拍車がかかって
人間不信になってしまったらしい。
(こんな内輪ネタ書いてもええんだろうか?)

だから、そのへんも加味して自分の意思半分、
周辺(叔母・母)の意志半分でやって来た。

クラブハウスに戻って、すごくひさしぶりにいろんな話を
した。葬式や法事の席は挨拶程度だったので、
大人になってからゆっくり話したのは初めてかもしれない。

もともと大阪芸大の写真学科卒なんで、美術関係の話や
もちろんゴルフ場のこと、昔話、お互いの兄弟の話なんかを
小一時間話した。

それから土砂を運ぶ一輪車を買いたいというので
二人でホームセンターにでかけた。

ここにきてまだ、ぼくは遊びにやってきた、という体になっている。
作業を手伝おうか?とも一度も訊ねなかったし、
向こうからも手伝ってくれるか?とも聞かれなかった。
親戚とはいえお互い大人だし、そのへんのやりとりが
ないと手伝うべきなのか、もっといえば手伝う意欲みたいなものも
なかなか出にくいというのが本音だ。

叔母からは、お礼はするみたいなことを言われたが
そんなことより、本人の意思のほうが僕にとっては
大事だ。年下の従兄弟に頭を下げてでも手伝ってほしいという
意思さえあれば、正直お金は二の次でもいいと思ってきた。

が、結局、僕がしびれを切らして、手伝う意思があることを
申し出た。本人の口からそういうことを聞きたかったとこだが。

その後僕は1時間ほど草刈機で広大な山の斜面の草を刈り、
その日は作業を終えた。
ちょこちょこ来ることになるんだろうと思ったが、まだ複雑な気分だ。
意を決して着て来た上着をクラブハウスに置いて、その日は帰った。

悪い人ではない。純粋すぎるほど純粋だ。ただ器用な人ではない。
周りの人の気持ちもわかる。僕もわかる。ただちょっと疲れる。