Progress

テレビで観た、ある棋士のドキュメント。


圧倒的に形勢不利な状況での勝負においては
普通の人はもちろん、その世界のトップを
走るような人でも勝負を投げる、諦めの境地に
陥るのは人間なら少なからずあることだろう。

その棋士を見守る控え室の棋士仲間や記者達が
この勝負はもうダメだろう、今日は出直しだな、などと
話す中、形勢不利な棋士は一向に投了する気配がない。

すでに対局開始から10時間以上経過して
肉体的精神的疲労の頂点を過ぎているにもかかわらず
形勢不利な棋士はひたすらに最善手を指し続ける。

形勢有利な棋士もひるむことなくその手を受け続ける。
控え室の棋士仲間や記者達にすら未知の領域となる
濃密で高次な対局が延々と続くことになる。

持ち時間も残りわずかとなり、早打ちの指し合いで
形勢有利な棋士が全く意味のない手を指してしまう。
そのことで局面が大きく変化し、結果、形勢不利な
棋士が大逆転で勝った。


もちろん天才的な才能と高い技術を持ってして
成せる技だけれど、こういう粘りの凄みというのは
この棋士のドキュメントに限らず、いろんな状況で
垣間見るたびに、自分もこうありたいと強く思うのです。

…と思うのですが、なかなか簡単ではありません。
自分自身のモチベーションを保つことすら危ういのに
「控え室の声」が聞こえてくるもんですから。

もちろん周りの意見は真摯に聞いて参考にしたいんだけど
諦めず粘るに越したことはないのが自分にはよく解っていて
「控え室の声」が自分を楽にさせる為の言い訳に出来そうなとき
その声を聞き過ごしながら次の最善手を見つけて実行に移す
というのは、なかなかしんどいものです。

…ですが、それでも敢えて粘るように心掛けております。
棋士でいうところの大逆転ではないですが、粘った結果は
周りの驚き以上に、僕自身がとても驚かされますから。